陳皮(ちんぴ)
ミカンの皮

成分の特徴
陳皮は、ミカン科(Rutaceae)の柑橘類の皮を乾燥させた生薬です。特にウンシュウミカンやキシュウミカンなどが薬局方で定められています。辛味と苦味があり、体を温める性質(温)があるとされ、「古いほど効き目が高まる」と伝えられることから「陳(ちん)」という文字が使われています。リモネンやヘスペリジンなど、柑橘の香りや健康効果に関係する成分が含まれています。
漢方に使われた歴史
陳皮は、中国で消化器系を整え、痰をさばく薬として古くから用いられ、『神農本草経』や『本草綱目』にも記録があります。その後、日本にも伝えられ、江戸時代以前から食生活や薬草学に取り入れられてきました。昔は現在ほどウンシュウミカンが普及していなかったため、当時は他の柑橘類を乾燥させて代用していたと考えられます。七味唐辛子の原料としてもおなじみで、調味料や香りづけとしても広く使われるなど、日本では食の文化とも深く結びついてきました。
効果効能
陳皮は、気のめぐりを良くしてお腹の張りをやわらげたり、消化を促進したりする(理気)効果で有名です。特に胃腸の働きを助け、吐き気や嘔吐、食欲不振にもよいとされます。また、湿気を取り、痰を減らす(燥湿化痰)作用があるため、たんの多い咳にも使われることがあります。
最近の研究では、リモネンやヘスペリジンが血行を促したり、リラックス効果をもたらしたりする可能性が指摘されています。消化器や呼吸器を中心に、幅広い不調をサポートする生薬といえるでしょう。
その他特筆事項
陳皮は、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」など、多くの漢方処方に登場します。また、料理の香りづけやお茶、入浴剤、薬用酒など使い道は多彩です。ただし、体の中に熱がこもりやすい人や陰虚(インキョ)と呼ばれるタイプの人には合わない場合があるので、注意が必要です。
古くなったミカンの皮を「陳皮」として使う家庭もありますが、品質としては厚みがあり色鮮やかで、しっかり香りのある皮が好まれます。