車前子(しゃぜんし)
オオバコ

成分の特徴
車前子(しゃぜんし)は、オオバコ科のオオバコ(Plantago asiatica)などから採れる種子を指します。和名でも「大葉子」と呼ばれるように、道ばたに見かけるあのオオバコと同じ仲間です。味は甘く、体を冷ます(寒)性質があるとされます。
「車前子」という名は、道路沿いに生え、車輪や馬車に踏まれても丈夫に育つことから付けられたといわれます。種子は水分を含むと粘り気のある成分を出し、靴や車輪にくっつきやすいのが特徴です。化学的にはアウクビン(イリドイド配糖体)、プランタギン(フラボノイド)、粘液質の多糖類などが含まれ、利尿作用や抗炎症作用に関わると考えられています。
漢方に使われた歴史
車前子は古くから利尿剤や下痢止め、炎症を鎮める薬として日本の漢方医学で重宝されてきました。『神農本草経』にも記されているほど歴史があり、排尿トラブルや膀胱炎、血尿、さらには目や呼吸器の不調にも使われるなど、幅広い症状に役立つと考えられていました。
効果効能
漢方では、車前子が排尿をスムーズにしてくれる(利尿通淋)力をもっているとして有名です。また、炎症を和らげる(抗炎症)働きや、下痢を抑える効果も期待されています。さらに、肝臓にかかわる部分を整えて目の疲れやかすみを改善する(清肝明目)ほか、肺の熱を冷まして咳をやわらげる働きがあると伝えられてきました。近年の研究でも利尿作用は支持され、血糖値を下げる可能性についても注目されています。
その他特筆事項
車前子は、特に高齢者の腰痛や脚の衰え、排尿の不調などに用いられる「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」などの処方に欠かせない素材です。そのほか、尿路感染や膀胱の問題に用いられる「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」や「清心蓮子飲(せいしんれんしいん)」にも配合されるなど、泌尿器系を中心に幅広く活躍しています。オオバコの葉や茎も、傷の手当てなどに外用で使われてきた歴史があり、植物全体が医療目的に生かされてきた例といえるでしょう。良質な車前子は黒っぽい褐色で、ふくらみがあり、水に入れると沈むという特性があります。