石決明(せっけつめい)- 漢方辞典

石決明(せっけつめい)

アワビの貝殻

石決明(アワビの貝殻)の画像

成分の特徴

石決明(せっけつめい)は、アワビの貝殻をもとにした生薬です。貝の形は耳のような輪郭だったり、やや細長い楕円形をしており、内側は真珠のように美しく輝きます。殻の表面に並ぶ呼吸孔の数や形は古くから品質を見分ける基準のひとつとされ、七つ孔や九つ孔のものが良品とされてきました。主成分は炭酸カルシウムで、昔の人々はこの小さな孔まで観察し、それぞれの違いが効き目や種類にどう関係するかを追究していたようです。

漢方に使われた歴史

石決明は、目に関わる不調を改善する大切な薬として重宝されてきました。たとえば視力の低下、目がかすむ、緑内障などに使われてきたと伝えられます。古い文献にも目の病気を改善する作用が記されており、「目を明るくする(明目)」という働きがあると信じられていました。さらに、頭痛やめまい、耳鳴りなど、目のトラブルと一緒に起こる症状にも使われることが多かったようです。アワビの内面が放つ真珠のような輝きが、視力向上につながるという直感的なイメージにつながったのかもしれません。

効果効能

近年の研究では、石決明が眼圧を下げる可能性や、目の機能をサポートする働きが注目されています。アワビの身には、ビタミンやミネラル、オメガ3脂肪酸、タウリンなどが豊富に含まれており、これらが視力を守るうえで役立つと考えられています。伝統的に目の健康を守る薬として用いられてきた歴史は、現代の科学的研究によっても少しずつ裏付けられているといえます。

その他特筆事項

日本では貝殻だけでなく、アワビの身自体にも目に良いとされる要素があると考えられてきました。石決明は、貝殻を煎じて利用するのが一般的ですが、体が冷えやすい(脾胃虚寒といわれるタイプの)人には注意が必要だとされています。石決明散のように、ほかの漢方薬と一緒に配合されることもあります。また、かつては神さまへのお供え物としても使われていたという記録が残っており、医療以外にも文化的な背景があることがうかがえます。