三七人参(さんしちにんじん)- 漢方辞典

三七人参(さんしちにんじん)

田七人参(でんしちにんじん)

三七人参(サンシチニンジン)の画像

成分の特徴

三七人参と田七人参は、ウコギ科(Araliaceae)の植物「Panax pseudoginseng Wall.」の根を乾燥させたものを指します。「三七(さんしち)」という名前は、この植物が3~7年かけてゆっくり成熟することに由来するといわれます。味は甘みと少しの苦みがあり、体を温める性質(温)を持つと考えられています。

この生薬にはサポニンが豊富で、ジンセノサイドやノトジンセノサイドなどが含まれます。高麗人参(Panax ginseng)と同じ”Panax”という属ですが、効能や使われ方がやや異なるため、混同しないよう「田七人参」「三七」などの別名を使い分けています。金にも換えられないほど価値があるという意味で「金不換(きんふかん)」とも呼ばれるほど重宝されてきました。

漢方に使われた歴史

三七人参は中国では古くから血を止める(止血)だけでなく、血の流れを促す(活血)目的でもよく使われ、ケガや打撲などによる腫れや痛みを鎮めるためにも用いられました。『本草綱目』にもその使用法が記されており、歴史をさかのぼると兵士が傷の手当てに携帯していたエピソードもあります。

このように、出血を抑える一方で血行を妨げない独特の作用が高く評価されてきました。止血と血流促進を両立させる薬は珍しく、ケガの治療にもってこいの生薬として特別な地位を得ていたのです。

効果効能

三七人参は、出血を食い止めながら血流の滞りも改善する(止血不留瘀・活血化瘀)、痛みを和らげ(止痛)、腫れをひかせる(消腫)など、多方面にわたる作用が知られています。外傷はもちろん、内出血や婦人科系の出血など幅広い場面で役立つとされ、関節炎や頭痛など痛みに対しても使われてきました。

最近の研究では、心臓や血管の健康、肝機能、血糖の調整、さらには男性の活力サポートなど、多面的な可能性が示唆されています。サポニンの多彩な働きが、こうした様々な作用に寄与していると考えられます。

その他特筆事項

三七人参は、根の大きさや数によって等級が分けられ、「十頭根(じっとうこん)」と呼ばれる太く立派な根が高品質とされます。中国の著名な医薬品「雲南白薬」や「片仔癀(へんしこう)」にも主要成分として配合されています。古来より『神農本草経』では最高ランクの「上品」とされてきました。

また、「生田七(きでんしち)」と「熟田七(じゅくでんしち)」では加工法が異なるため、効き方にもわずかな違いがあると考えられています。日本ではしばしばサプリや健康食品として扱われることが多く、中国で医薬品とされている状況とはやや異なるようです。