阿膠(あきょう)- 漢方辞典

阿膠(あきょう)

ロバの皮から作るゼラチン

阿膠(アキョウ)の画像

成分の特徴

阿膠(あきょう)は、ウマ科のロバ(Equus asinus)の皮を煮出して作るゼラチン質の生薬です。味は甘く、体を冷ましも温めもしない中間的な性質(平)とされています。タンパク質やコラーゲン、アミノ酸がたっぷり含まれ、昔から高価な薬として知られてきました。とくに中国山東省の「東阿(とうあ)」で作られたものが名高く、「東阿の水が良質な阿膠を育む」といわれてきました。

漢方に使われた歴史

阿膠は中国の伝統医学で2500年以上もの歴史を持ち、『神農本草経』では「上品」に分類されています。古代の中国では貴族の女性が美容や妊娠にまつわるケアのために愛用し、血を補い、女性の体をいたわる生薬として重んじられてきました。日本でも江戸時代の医学書に登場するなど、歴史的に輸入されていた形跡が確認されています。

こうした背景から、阿膠は主に血を養う「補血」、体のうるおいを満たす「滋陰(じいん)」、出血を抑える「止血」といった働きが期待され、女性の悩みに広く使われてきたのです。

効果効能

阿膠は、貧血やめまい、動悸、疲れ、肌の乾燥、空咳、いろいろな種類の出血など、血や水分が足りないときによく処方されます。近年では、赤血球を増やす可能性やアンチエイジング効果が研究されており、栄養豊富なコラーゲン源としても再評価されています。伝統医学の観点からいうと、「血」と「陰(うるおい)」を同時に補うため、女性の体と深い関わりがあると考えられています。

その他特筆事項

「ロバの皮を伊豆で加熱抽出する」という話は、信ぴょう性が低いか、何か別の事例との混同が考えられます。阿膠は特に中国山東省・東阿が本場であり、そこ以外の地域ではあまり聞かれないのが実情です。

阿膠は、たとえば「温経湯(うんけいとう)」や「芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)」といった漢方処方にしばしば使われます。ただし消化しにくい面があり、胃腸が弱い人や「湿熱」と呼ばれる熱と湿気が体内にこもっている状態の人には合わない場合があります。また、高価な原料ゆえに偽造品が出回りやすい点にも注意が必要です。需要が高いことから、ロバの数が減っているという報告もあり、本物の阿膠を手に入れるには厳格な品質チェックが求められます。